2025年10月25日(土)、26日(日)の2日間にわたり、千葉市動物公園にて「CHIBA-ZOOTUBEプロジェクト」が開催されました。2022年度、2023年度の開催に続き、3回目となる本イベント。千葉市内のさまざまな地域から集まった子どもたちが、動物公園からの依頼を受け、チーム一丸となって課題解決に向けた動画を制作しました。今回は当日の様子や運営に関わるスタッフの想いをお届けします!
執筆者:竹田りな 撮影:株式会社2L
CHIBA-ZOOTUBEプロジェクトとは?
「CHIBA-ZOOTUBEプロジェクト」は、千葉市動物公園とイオン環境財団の協力を得て、Seedlings of Chibaが開催するアントレプレナーシップ(起業家精神)を育むためのプロジェクトです。動画の制作を通じて、課題発見能力や創造性、実行力を身につけることを目的としています。
子どもたちは、まず動物公園から依頼された内容について現状や課題を学びます。そして千葉市動物公園の広報担当職員として、4人1チームに分かれ、課題の解決につながる1分以内の広報動画を制作。動画の制作に取り組む中で、周りの大学生や社会人ボランティアなどのスタッフからアドバイスを受けることで、働くことや地域社会との関わりも学んでいきます。
さらに完成した動画は、千葉市の公式YouTubeチャンネルで公開されます(12月中に公開)。一般の方々のリアルな反応を知ることも学びの1つです。

依頼されたミッションは?
千葉市動物公園の鏑木一誠園長と、広報担当の和田寛之さんから今年のミッションが発表されます。その内容は「失われつつある生物多様性や地球環境など熱帯雨林が抱えるさまざまな問題について、多くの人に知ってほしい。そして、考え行動するきっかけとなるような動画を制作してほしい」というものです。


動画の制作をはじめる前に、子どもたちは「動物園の役割」と今回のテーマである「熱帯雨林」について学びます。
動物園の役割とは
動物園には、「種の保存」「調査研究」「教育普及」「レクリエーション」の4つの社会的役割があります。その中でも特に重要なのが、絶滅に瀕している動物たちを守る「種の保存」です。
熱帯雨林の現状と人間生活との関わり
熱帯雨林は、地球上の陸地の7%ほどにすぎませんが、そこには世界中の生物種の50〜80%が存在し「生物多様性の宝庫」と言われています。しかし現在、熱帯雨林の減少が進み、生物多様性の損失が深刻な問題になっています。
生物多様性とは、多種多様な生きものの命のつながりのことを指します。さまざまな生物が直接的・間接的に支えあって暮らしているのです。それは私たち人間も例外ではありません。たとえば、医薬品の原料や電子機器に使われるレアメタル、私たちが吸う酸素なども熱帯雨林に由来しています。熱帯雨林を守ることは、地球全体のバランスを保ち、私たちの生活を守ることにもつながっていくのです。
グループ活動がスタート! ロケハンへ


熱帯雨林について学んだ後は、グループ活動がスタートします。緊張しながらの自己紹介を終え、グループ内で、監督と撮影・編集担当を決めます。
その後は、いよいよロケハンの時間です! 和田さんに案内してもらいながら、動物公園内にある熱帯雨林を学べる学習展示施設「動物科学館 生命の森 熱帯雨林」を見て回り、各々動画のイメージを膨らませます。
もともとは、ロケハン後に絵コンテを作成し撮影という流れでしたが、子どもたちからは「ロケハン中にも記録写真を取りたい!」という声があがり、ロケハン中も撮影が可能に。早速自ら主体的に考え、行動する姿が見られました。
動画内容の検討・絵コンテの作成・提案


どんな動画にしようか、1人ひとり絵コンテを書きながら考える子どもたち。できた絵コンテを見せながら、和田さんに提案をします。しかし、なかなかOKが出ません。和田さんからアドバイスを受けながら、どうすればもっと意図が伝わる構成・内容になるかチームで話し合いを重ねました。
撮影開始!インタビューにも挑戦




絵コンテが完成したら、いよいよ撮影開始です! 「取材中」の腕章をつけ、一般のお客様の妨げにならないよう配慮しながら撮影していきます。
さらにインタビューにも挑戦。「なんて声を掛けよう?」「こう質問したら◯◯って言われるかな?」「背景はここがよさそう!」などとあらかじめ話し合い、少し緊張した面持ちでお客様に声をかけます。断られる場面もありましたが、しっかりインタビューの意図や目的を説明し、内容を理解いただいた上で、お客様の生の声を聞くことができました。
また、撮影中も新たに思いついたアイデアを和田さんに相談したり、やりたいことができるように周りのスタッフに交渉したりする姿も見られました。

編集作業


撮影を終えた後は、いよいよ編集作業です。VLLO(ブロ)という動画編集アプリを使いながら、撮影した動画を1分間に収まるように編集していきます。
「インタビューは3分あるけど、入れられるのは15秒だよ……」などと、どの部分を使うのか選択に悩む様子も見られました。視聴者に一番伝えたいことは何か、どこを切り取れば伝わるのか、グループの動画のテーマに立ち戻り考えます。
また編集中もグループ内で役割を分担し、「ここの写真がほしい!」「インタビューしてくる」と再撮影に向かう場面もありました。
エフェクト・BGMをつける

どんなBGMや文字テロップをつけたら目を引く動画になるのか、どうすれば思い通りのエフェクトがつけられるのか試行錯誤する姿も見られました。
タブレットで編集しつつ、別のタブレットで検索をしたり、AIに聞いたりしながら取り組んでいきます。実際に思うようなエフェクトをつけられたときには「できたー!」「すごい!」と仲間とハイタッチ! やり方を模索し思い通りに表現できたことは、自信につながる経験になったのではないでしょうか。
ナレーションを収録する

編集作業と同時にナレーションもつけていきます。ナレーション原稿を作成した後、特設のブースに集まり、動画に合わせて声を入れます。頭の部分が切れてしまったり、雑音が入ってしまったり、うまくいかないことも。そんな失敗も含めて楽しみつつ、納得いくまで何度も撮り直す姿が印象的でした。
サムネイル作り
さらに、サムネイルも作ります。思わずクリックしたくなるのはどんなデザインか、どんな写真を使うと動画の内容が伝わりやすいのか、など考えながら編集作業と並行して進めます。
発表準備
編集作業も終盤に差しかかると、手分けして発表の準備にも取りかかります。自分たちが頑張ったところや工夫したところなど意見を出し合いながらまとめていきます。そして原稿が完成すると、スムーズに発表できるよう何度も練習して本番に備えていました。
締切の時間が迫り、「監督、これやってもいいですか?」などとグループで声掛けしながら自主的に動く子どもたち。積極的に手をあげ、チームのために率先して動く様子が見られました。
発表・閉会式
全てのチームが無事に提出を終え、ついに発表の時間がやってきました。動画を再生した後に、各チーム壇上で発表を行います。保護者の方々もいらして、子どもたちの様子を見守ります。
わがねこチーム:『我々が今できること』

- 熱帯雨林をあまり知らない若者や子どもを対象に作りました。熱帯雨林の恩恵を受けながら生活している私たちが、その熱帯雨林を自らの手で壊している現状がある。けれど、それを改善するための行動は簡単に誰にでもできる、というのが一番伝えたいメッセージです。
- 工夫した点は、緑豊かな熱帯雨林がだんだん白黒になるようにエフェクトをつけて、熱帯雨林が人の手によってどんどん消えていくことを表現したところです。
CC Snow Man チーム:『熱帯雨林、今私たちができること』

- 最初に熱帯雨林がどのような場所かを伝え、そこに生息する動物たちの様子を紹介しました。さらに今まで私たち人間が森にしてきてしまったこと、今私たちができることを紹介しました。
- 動物たちの自然な動きを写真で捉え、矢印や名前を描いてわかりやすく伝える工夫をしました。
動物保護チーム:『動物や地球について』

- 動物と地球が今どんな大変な状況かをみなさんに知ってもらおうと、「動物や地球について」という内容にしました。
- 1分という短い中で科学館の内容を全部伝えるのは難しいと思ったので、「実際に足を運んでみてほしい」というまとめをつけました。また見てくれる人が楽しく学ぶことができるように意識して編集しました。
熱帯保護チーム:『未来を変えるのは私たちだ』

- 熱帯雨林をあまり知らない人たちをターゲットにし、熱帯雨林の伐採を減らせるように、モノや食べ物を大切にしましょうという想いを込めて作りました。
- 工夫した点は、動物の目線になって現在の状況について考えたことです。人間のことだけではなく、動物のことも考える必要があるのではと考えました。
審査を経て、いよいよ結果発表です。鏑木園長から、最優秀賞である「千葉市動物公園賞」が発表されます。
受賞したのは「わがねこ」チームの『我々が今できること』でした! 鏑木園長から賞状と賞品を授与されます。

また今回は特別賞として、イオン環境財団賞が設けられました。受賞したのは、「CC Snow Man」チームの『熱帯雨林、今私たちができること』。イオン環境財団の専務理事の山本百合子さんから、賞状と賞品が手渡されました。

惜しくも受賞を逃した2チームも、各チームのサポートスタッフから賞状と記念品を受け取ります。
その後、鏑木園長から2日間の学びの振り返りと、イオン環境財団の吉永さんからフィードバックを受けました。最後まで真剣に耳を傾ける子どもたちは、動画の制作を経て、最初にお話を聞いた時とはまた違った気づきを得たのではないでしょうか。
チームで挑んだ2日間
最初は少し緊張気味で、会話もぎこちなかった子どもたち。ですが、気づけばあっという間に打ち解けて、納得のいく動画を作るためにチームで力を合わせていました。慣れない作業ばかりで思うようにいかない場面もありましたが、自分たちで考えたり調べたり、時には周りのスタッフの力も借りたりしながら、1つひとつ乗り越えていく姿が印象的でした。この2日間の経験は、きっと子どもたちの自信につながったことでしょう。
子どもたちが作った動画
子どもたちが作った動画は、千葉市のYouTubeチャンネルで公開されます(12月中に公開)。子どもたちの頑張りの成果をぜひご覧ください!
わがねこチーム(「千葉市動物公園賞」受賞作):『我々が今できること』
CC Snow Manチーム:『熱帯雨林、今私たちができること』
動物保護チーム:『動物や地球について』
熱帯保護チーム:『未来を変えるのは私たちだ』
運営に関わる方々からのメッセージ
千葉市動物公園 園長 鏑木一誠さん

この2日間で、熱帯雨林の素晴らしさや現状の課題、我々の生活との結びつきについて知ってもらえたと思います。今回のゴールは動画にまとめることでしたが、本当のゴールは、この2日間の学びから、みなさんが今後どのように行動を変えていくかです。ぜひ今日をきっかけに、熱帯雨林を守るためにはどうしたらいいのかという視点を持って、自分ごととして行動してほしいなと思います。
みなさんへのメッセージとしてこの言葉を紹介します。「不可能の反対は可能ではない。挑戦だ」。すなわち、物事を可能にするのは挑戦ですよ、ということです。これは初めて大リーグ入りした黒人のジャッキー・ロビンソンの言葉です。何か課題にぶつかった時に、その課題の本当の理由を自分で考え、そこに果敢に挑戦して、問題を解決する。そんな風にぜひ将来を切り開いていってください。
そして危機を乗り越えるのに必要なのは、コミュニケーションです。人類はこれまでさまざまな危機に直面してきましたが、知恵を使い、仲間を作って乗り越えてきました。みなさんもこの2日間で仲間とたくさんコミュニケーションを取ったと思います。今回の学びを持ち帰って、友達や先生、ご家族ともぜひ話をしながら考えてみてください。
千葉市動物公園 企画広報班主査 和田寛之さん

今回で3回目の開催になりますが、過去2回と違い、少し心配もありました。過去2回は動物を中心とした園のPR動画を作るという内容でしたが、今回のテーマは熱帯雨林についてです。さらに、ただ動物科学館を紹介するだけではなく、見た人の行動変容を促すような動画を制作するという、よりチャレンジングな依頼でした。
ロケハンでは、動物に心惹かれる子も多く、絵コンテを作る際にも「動物のインパクトのあるシーンを最初に入れたい」といった希望もありました。そこで「本当に目的に沿った動画にするためには、何の要素を入れてどう構成するのがいいのか」「次のシーンへのつながりはどうか」など、問いかけながら考えてもらいました。絵コンテが完成する頃には、自分たちの決意表明や視聴者への問いかけなど、しっかりまとまっているチームが多く、子どもたちの柔軟さと適応力に感心しましたね。
また子どもたちがこんなに頑張っている様子を見ていると、順番をつけることが心苦しく感じる部分もあります。それでもここで順位をつけることで、うまくいって賞をもらえた経験も、頑張ったけれども届かなかった経験も、どちらの経験も今後彼らがさまざまなことに挑戦する際の礎になると信じています。
公益財団法人イオン環境財団 吉永園さん

イオン環境財団は、「植樹」「助成」「環境教育・共同研究」「顕彰」の4つの分野を柱に活動している公益法人です。創設者の岡田卓也さんは、イオン株式会社の創業者でもあり、事業活動のなかで環境保全の必要性を強く感じ、環境保護に特化した財団を立ち上げました。
私たちは、未来の担い手である子どもたちが、将来どんな立場になっても環境のことは忘れないでほしいという思いから、Seedlings of Chibaに参画しています。また生物多様性の保護という志を共有していることから、千葉市動物公園と2023年に連携協定を結び、園内の森林整備などの取り組みも行っています。
「CHIBA-ZOOTUBEプロジェクト」では、動物公園から受け取ったテーマについて、子どもたちが自身で学んだことを噛み砕いて、見る人に伝わるよう動画にまとめます。動画を作ることは、人に教えることと似ているなと思うんですね。アウトプットをするには、しっかり内容を消化して、知識を自分のものにする必要があります。そのプロセスが、本当の学びにつながるのではないでしょうか。また、さまざまな学校から子どもたちが参加してくれているので、学びを持ちかえり、周りのお友達にも広めてくれるといいなと期待しています。
現在は16名ほどの定員ですが、今後はより多くのお子さんに参加してもらえるよう、「西千葉子ども起業塾」のように少しずつ時間をかけて発展させていけたらと考えています。
303BOOKS株式会社 常松心平さん

Seedlings of Chibaは、千葉大学と千葉市で2010年から行っていた「西千葉子ども起業塾」というワークショップの成功を広げていこう、子どもたちにアントレプレナーシップを学べる機会を無償で提供しよう、とさまざまな団体が協力し発展したものです。日本の将来を考えると、よい起業家がいなければ、社会は発展していきません。少しでも起業に興味のある子を取りこぼしたくない、そんな思いで参画しました。
今回のプログラムは、アントレプレナーシップ=起業家精神を持って、千葉市動物公園の願いやメッセージを世の中に届けることに挑戦しようという企画です。自分が楽しい動画を作るのではなく、「誰かの想いを伝える」という目的を持って取り組むことを大切にしています。動画の制作はお子さんが興味を持ちやすい分野でもありますし、今では企業のプレゼンテーションやPRなどで動画を使う機会も多くあります。動画制作のスキルは、将来自分がやりたいことを形にしたり、仕事でお客様の願いを叶えたりする時にも生きるはずです。
また、個人的には、子どものうちから「起業」という選択肢があることを知るのはとても意義のあることだと思っています。起業というと大きな会社の社長になることを想像するかもしれませんが、決してそれだけではありません。自分が幸せに生きていける程度に、自分で稼ぐという道もあります。そのことを知っていれば、社会に出て壁にぶつかったときに救いになることもあるのではと思っています。