2024年2月24日(土)千葉市役所にて、「起業家教育ワークショップ〜『ifLinkオオギリ』でアイデア発想〜」イベントが開催されました。
ワークショップでは、一般社団法人ifLinkオープンコミュニティが提供するアイデア発想ワークショップ「ifLinkオオギリ」を活用します。日常に潜んでいる課題の発見から解決のアイデア発想までをゲーム感覚で体験することで、アントレプレナーシップを育むイベントです。
参加者は、提示された状況から困りごとを考え「IF(もし◯◯したら)」「THEN(◯◯する)」を組み合わせて解決策を提案します。課題発見から解決までのアイデア出しと発表・共有を通して、イノベーションの起点となる「自ら考え、行動すること」の練習を積むことができるのです。
執筆者:猪狩はな 撮影:栗原論
さまざまな企業・団体に所属する人々が、垣根を超えてオープンに交流しながら「誰もがカンタンにIoTを使える世界」を実現するためのコミュニティです。170社以上の企業や学校が集まり、IoT機器のifLinkモジュール化やIoTソリューションの試作、アイデア発想、マーケティングなどを行っています。
ifLinkオープンコミュニティ|誰もがカンタンにIoTを使える世界を目指して
「ifLinkのアイデア発想法」とは?
どこで・誰が・どんな困りごと? お題を決めて「IF(もし〇〇したら)」「THEN(〇〇する)」を組み合わせて解決方法を考える、ifLinkオリジナルの発想法です。
イノベーションはなぜ必要?
ワークショップに先立ち、まず日本の現状とイノベーションの必要性について学びました。
この30年の間に、日本の企業は世界と比べて成長していない現実があります。その大きな理由の1つに、日本には「イノベーション(技術革新)」が少ないという背景があります。
イノベーションを起こす鍵となるのは「自ら課題を見つけ、その課題をどうやったら解決できるかを考える力」です。こんな風に言われると、つい「自分にはできない」と身構えてしまうかもしれません。しかし、身の回りの課題を見つけ、解決方法を思いつくために「天才」である必要はありません。
「よくないアイデアでいいんです。とにかくたくさんアイデアを出し、そこから光るものを見つけることが大切です。怒られるかも……こんなこと言ったらダメかも……ということは気にしないで、この時間はどんどんアイデアを出していこう!」
スタッフのその言葉に、それまでは難しい顔で資料を読んでいた子どもたちの顔がパッと華やぎます。
「なんでも出していいんだって」と保護者に話しかける子もいれば、声に出さずに目くばせする子もいました。その様子を見てお子さんに笑い返したり、大きく頷いて返したりリアクションする保護者の姿も微笑ましかったです。
IF-THENってなに? クイズで学ぶ
イノベーションを起こすアイデアを、「IF-THEN」のフレームワークを使って探していきます。さっそく、身の回りの「IF-THEN」を探す練習スタートです!
そうは言っても「IF-THEN」と言われると少し難しく感じるのか、会場に少し緊張した雰囲気が漂います。
「雨が降ったら、どうしますか?」
「傘をさす」「走って家まで帰る」「高速で雨粒を避ける」
これが「IF(もし〇〇したら)」「THEN(〇〇する)」の基本的な考え方だと解説されると、保護者も子どもたちも思わずにっこり。中には「高速で雨粒を避ける」動作を再現している子もいて、場がほっこりと温まります。
「なんだ、それならいつもやってる!」
「これもIF-THENなんだね」
「なんかできそうな気がしてきた……」
親子で、グループで、クイズを通して「ifLinkのアイデア発想法」を楽しく学んでいきました。
「ifLinkのアイデア発想法」ワークに挑戦!
さあ、いよいよ実際に「ifLinkのアイデア発想法」に挑戦していきます!
- A3のワークシート
- ふせん
- 赤い丸シール
- ペン
がグループごとに配られます。
家庭、学校どちらのシーンのアイデアを出すのかを決めたら、自分たちにとって「うれしいこと」「困っていること」をふせんに書き出していきました。
そしてそれを踏まえて、困りごとを解決するには? うれしいと思うことが起きるようにするには? をそれぞれ「IF」「THEN」で書き込みます。
「答えは1つではありません。皆さんが考えたアイデアは全部正解。なので、どんなアイデアでも頭に浮かんだことは全部書き出してください!」
その言葉に背中を押され、保護者も子どもたちも、ふせんにどんどんアイデアを出していきました。中には、A3のワークシート1枚では足りず、追加をもらうグループもあったほどです。
「IF」「THEN」を出し切ったら、その中でも一番オススメのアイデアを1つ選び、タイトルをつけて完成!
アイデアを出す場面ではどんどん手を動かしてきた子どもたちですが、ひとたび「タイトルをつける」と言われるとスイッチが切り替わりました。
「このアイデアの良さが、見た人にすぐわかる名前ってなんだろう」
「ちょっと面白いタイトルにしたいかも」
どのグループも、一気に集中モードです! 頭を抱えながらも、その表情は明るく、楽しそうな子どもたち。そんなお子さんをサポートし、一緒に作業を進める保護者たちも生き生きとしていました。
考えたアイデアを発表!
ワークショップも後半戦。一生懸命考えたアイデアを発表する時間です。
「アイデアの成長は、対話の時間から生まれます。なので、僕たちはワークショップの中でも発表の場を大事にしています。1人ができることには限りがありますが、人のアイデアを聞いたり、話したりすることで、もっとできることが広がるんです」
そんな話を聞いてからだったこともあってか、その後の「発表してくれる人?」の問いかけに、ピンと真っ直ぐに手を挙げる子がたくさん! 今回は3人の参加者が、前に出て発表してくれました。
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発表は話す人だけではなく、聴き手の姿勢も重要です。「発表に対してコメントや質問がある人?」という問いかけにも、子どもたちは積極的に手を挙げます。
「こういう場面では、どうなりますか?」
「えーっとそれは………」
グループで考えたアイデアに、自分1人で考えていた時には思いつかなかった「新しい視点」を加えていきます。
中には「我が家にぜひその機械が欲しい!」とコメントをもらえたアイデアもありました。「実際に欲しいと思ってくれるものを考えられたのは、とてもすごいことです。それにお金を払ってもいいと思ってくれるものを作れたということですから」とスタッフからもフィードバックがもらえ、グループのメンバーもニッコリ!
実際に社会で活躍している大人たちから意見をもらえる機会は、なかなかありません。そういった意味でも、身近な課題を見つけ、解決のためのアイデアを出し、発表までを含めて行う場を持てたのは大きな学びになったのではないでしょうか。
最後に「今日はこの時間だけで、アイデアが200以上生まれました」と言われて、大人も子どもも「確かにそうだ!」とびっくり。難しそうに思えた「アイデアを出す」プロセスを、楽しみながら体験できた時間になりました。
アントレプレナーシップ教育が当たり前の社会に向けて
アントレプレナーシップ教育とは、起業家精神を育む教育のことです。起業家を育てるのではなく、起業家の方々のような「チャレンジ精神」や「発想力」「試行錯誤して取り組む力」といった能力を伸ばす目的で行われています。
今回のイベントは「千葉にアントレプレナーシップ教育のアップデートを」という思いが合致し、Seedlings of Chibaと「ifLinkオープンコミュニティ」が共創することで実現しました。最初のアイデアは小さくても、みんなで協力することでイノベーションを生み出すアイデアを作れるということ、天才でなくてもイノベーションを起こせるということを「ifLinkのアイデア発想法」で体感できたのではないでしょうか。
参加した子どもたちからも「身の回りにある『こうなったらうれしい!』をたくさん見つけることができた」「もしこれができたら、を考えるのが楽しかったです。今日考えたことを大人になったら実現したいです」という、前向きな感想が溢れていました。
Seedlings of Chibaが目指すのは「誰もがアントレプレナーシップ教育を受けられる社会」。今回のような共創も取り入れながら、今後も活動を広げていきます!
Seedlings of Chiba会員・一般社団法人ifLink オープンコミュニティ エバンジェリスト・東芝インフラシステムズ(株)スペシャリスト・林田章裕さん
現在私は「アントレプレナーとしての姿、楽しんで地域創生や日本と教育のアップデートに取り組んでいる姿を見せることで、自分に続く人が出てきたら嬉しい」という思いで、イベント開催や社外の活動を進めています。
今までに経験したことや身につけたスキルを、1つの会社の中だけで留めておくのはもったいない。どれだけ社会全体に還元できるかが大事だと感じているからです。まずは地元である千葉に地域貢献したいという思いがあり、またSeedlings of Chibaの取り組みへの共感もあり、今回の企画を提案させていただきました。
「ifLinkのアイデア発想法」は楽しくアイデアを出す経験ができるものです。このワークは、アントレプレナーシップ教育の入り口としてぴったりだと思っています。Seedlings of Chibaで毎年夏に開催している「西千葉子ども起業塾」に彩りを添える様なイベントの提供ができたと考えています。
イノベーションは、アイデアをただ出しただけではできません。アイデアをカタチにする工程が必要です。そのためには1人で考え込むのではなく、アイデアに乗っかってさらなるアイデアを出すこと、アイデアの原石を見つけてブラッシュアップしていくことが求められます。
さらに、今の時代は「AIを使えるのが当たり前」になっていくタイミングです。ぜひみなさん、新しい技術をとにかく触ってみる、使ってみる経験を積んでください。「ifLinkのアイデア発想法」でアイデアを出して、共創し、実際にAI技術でカタチにする……そんな未来を実現出来たら素敵だなと思っています。
Seedlings of Chiba事務局長・(株)プロシードジャパン 代表取締役社長・吉川 亮さん
今回のワークショップで「話す人だけでなく聴く側の姿勢も大切」というお話がありましたが、これはアイデアを出すときには特に大事な視点です。誰かのアイデアに対して、まず欠点を探して批判する雰囲気ができてしまうと、誰もなにも言えなくなってしまいます。粗探しをするのではなく一緒につくる姿勢を持ち、「私ならこうする!」とアイデアに乗っかっていくことで、よりよいアイデアを出していけるのです。
こういった取り組みはワークショップだけに限らず、家族や友人、周囲の人との関わりからもやっていけることです。人とのコミュニケーションからも、アントレプレナーシップは育めます。ぜひ、普段から試してみてください。