「西千葉子ども起業塾2021(発展コース)」開催!


2021年8月3日から5日の3日間にわたり、「西千葉子ども起業2021(発展コース)」が開催されました。「発展コース」では、子どもたちの会社が、JFEスチール株式会社からの『取引先の会社に渡す贈答品の企画をしてほしい』という依頼に応えるために、活動をしました。昨年度はオンラインでの実施でしたが、今年度の「発展コース」は対面で実施しました。

「西千葉子ども起業塾」とは?

「西千葉子ども起業塾」とは、千葉大学藤川研究室と千葉市が共同主催している小中学生を対象にしたプロジェクトで、学生スタッフを中心に起業家や社会人がサポートしながら企画し運営しています。2010年から毎年約30~40人ほどの千葉市内の小中学生が参加しており、参加する子どもたちが企業のニーズを探り、事業を企画・提案することを通して、子どもたちのチャレンジ精神を養い、働くことへの理解を深めることを目的としています。

今年度の起業塾は、起業について基礎的なことを学ぶ「入門コース」と、学びを活かす「発展コース」に分かれて行われました。(入門コースについてはこちら!)

1日目:たくさんの人との「初めまして」

最初は挨拶をしてお互いの名前を知ることが重要なので、同じ会社の人や社会人とはじめて名刺交換をしました。「みて、こんなに名刺がたくさんあつまったよ!」と交換した名刺を抱えてうれしそうに話す子どもたちの様子が見られました。

挨拶をしながらお互いの名刺を交換

次に、社会の仕組みについて知るための講義が開かれました。JFEスチールによる「JFEの鉄づくりの秘密」、千葉銀行による「会社の資金運営について」、千葉東税務署による「納税とは何か?」の3つの講義を受ける子どもたちの表情は真剣でした。

講義を受けている様子

そして、起業に必要不可欠なものである「融資」を受けるために、講義や入門コースでの学習を生かしながら、経理部が会社の経費の計算をしました。架空の「西千葉銀行」に融資申込書を握りしめながら、緊張した面持ちで向かう姿や、書類に押された印鑑や捺印を物珍しそうにみる姿が見られました。活動終了後には、社長から渡された給料(起業塾通貨「ラビット紙幣」)を抱えて、大喜びしている子どもたちがいました。

「融資」としてお金を借りることや自分の働きに対する報酬を受け取ることで、子どもたちは社会の中でのお金の役割を学ぶ貴重な体験となりました。

電卓を使って会社の経費を計算

2日目:“もらってうれしいもの”ってなんだろう?

「その企画が実現可能である根拠を示してほしい。」

緊張した面持ちで商談にきた子どもたちに向けられるJFEスチールの担当者・和崎さんの言葉は一見厳しい言葉。しかしそれは、社会人として扱い対等な目線に立っていたからこその言葉でした。一回目は緊張で言葉に詰まっていた子どもたちも、回数をかさねるごとに、提案の中身も高度になっていき、真摯なまなざしで商談をする姿が見られました。

オンライン(zoom)でのJFEスチールとの商談

JFEスチールからの依頼に対してどのような企画を提案するのか、商談での成果をもとに会社の子どもたち全員で試行錯誤を繰り返していました。ホワイトボードを囲んで話し合ったり、イメージイラストを描いたり、会社のタブレットで検索をしたりする姿が見られました。

さまざまな意見が飛び交う会社での話し合い

3日目:全員で作り上げた企画書、ぜひ採用してください!

最終日、各会社とも企画書を完成させました。そして、完成した企画書をもって、JFEスチールに最終プレゼンテーションをしました。どの会社の企画も工夫があり、子どもたちの発想の豊かさには、JFEスチールの担当者も驚きを隠せませんでした。

プレゼンテーションのあとは、一つ一つの企画に対する評価が発表されました。「実用性があり即戦力としてすぐに使える」というA評価や「方向性が良いが少し物足りない」というB評価という評価を得る企画もありました。もちろん、「無理があるが発想やコンセプトとしてはよい」というC評価になる企画もありました。評価を聞いて落胆する子どももいましたが、その後に続いた企画ごとの評価点や改善点などの説明を聞くうちに、「何が足りなかったのか」ということに気が付き、悔しく感じながらも納得する子どもの姿が見られました。

評価に対する報酬が社長に手渡されたときは、どの会社の子どもも「やり遂げた」と実感しているようでした。

緊張しつつも堂々とした最終プレゼンテーション
報酬金を受け取り、会社の成果を実感

報酬金を受け取った後は、会社での最後の大仕事である「決算」です。経理部を中心に、出資金や融資の返金、法人税の納税などをしました。

利益がある会社、むしろ損失が出てしまった会社、さまざまある中には帳簿での計算が合わず決算がなかなか終わらない会社もありました。しかし、だれひとりとしてあきらめることなく、時間がくるぎりぎりまで活動をしていて、3日間の集大成となりました。

計算が非常に複雑な最終決算に苦戦

「社長はどう思いますか?」と聞かれる社長だからこその苦悩

3日間の活動の中で、社員のまとめ役の立場である“社長”は、話し合いの中で意思決定を任される場面が多くありました。そんななか、ある会社では社員同士で意見のぶつかりが起き、板挟みになって困り果ててしまった社長がいました。その社長は限界に達してしまい、「もうどうしたらいいのかわからない。」と会社は崩壊寸前でした。

しかし、お昼休憩をはさみ気持ちを切り替えた社員たちは、社長の気持ちをしるために社長と話し合い、お互い歩み寄ることで、会社はまたひとつになり、意見の違いもうまく生かすことができるようになりました。

3日目、起業塾が閉塾したあとに、だれもいないはずの会社のホワイトボードには社長から「最高でした。」という社員へのメッセージがありました。そんな気持ちを受け取った社員たちとともに、笑顔の社長の姿がありました。

ホワイトボードにのせた社長の想い

起業塾がのこしたもの

起業塾に参加した子どもたちは、3日間をとおして会社の仕組みやお金の動き方など、普段生活している中ではなかなか触れる機会のないことを学ぶことができました。

入門コースから参加している子ども、昨年度やそれ以前も参加している子ども、発展コースだけ参加している子ども、西千葉子ども起業塾との関わり方はひとりひとり違いました。しかし、最終日に子どもたちからは、「楽しかった。また参加したい。」という言葉があふれました。

来年度以降も、変化する部分と受け継いでいく部分を両立させながら、西千葉子ども起業塾はさらに進化をとげていきたいです。

困難を乗り越えた仲間同士、素敵な笑顔で「ハイ、チーズ!」

モス塾長からのメッセージ

かつて西千葉子ども起業塾に塾生として参加した経験がある、今年度の起業塾を中心となってやり遂げた「モス塾長」からメッセージです。

塾生と学生スタッフのリーダーであった塾長

西千葉子ども起業塾では、多くの塾生が、初めて会う仲間たちと会社を立ち上げます。「贈答品を企画する」というミッションに悩んだり、会社内ですれ違いが起きてしまったりと、様々な困難がありました。しかしどの会社も、大人相手に商談を進め、最後は立派にプレゼンテーションを行いました。この姿に、子どもの無限大のパワーを感じ、スタッフである学生や社会人も感銘を受けたと思います。塾生にとって、仲間とともにやり遂げたこの三日間が、これから色々なことに挑戦する上で、大きな自信となってくれたら嬉しいです。

現在、次の開催に向けて企画を進めているところです。これからも、より多くの子どもたちにこの起業塾に挑戦してほしいと願っています。

千葉大学教育学部副学部長の藤川先生より

大人の目線で起業塾を俯瞰していた藤川先生

西千葉子ども起業塾の意義とは、子どもたちが「自分が社会を支える一員であること」と「新たな課題を見つけて解決する力があること」を認識して、自分たちの力で困難を乗り越えていくことができるという自信につなげることです。

参加した子どもたちは、リーダーシップを発揮したり、活動に積極的に参加したりする子どもが多くいるなか、複数回参加している子どもの年度を超えた成長がみられました。運営に携わった学生スタッフは、自分たちで設定してルールやプログラムのなかで、直面した課題を話し合って解決することができていました。また、教員以外の社会人スタッフと多く接することで、「教育」というものを外の視点から相対的に見ることができたのではないでしょうか。

今年度の入門コースのように起業にかかわる課題やポイントを集中的に学びつつも、発展コースのように学びを統合して一つの仕事を作り上げていくことを、より充実した形で実践していきたいです。

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