「子どもの成長を信じ見守る」
元塾生現スタッフの山路桃香が考える、
これからの西千葉子ども起業塾


過去10年間、子どもたちにリアルな社会体験の場を提供してきた西千葉子ども起業塾。現在スタッフとして運営に携わっている山路桃香さんは、小学生の頃西千葉子ども起業塾の塾生を経験しています。

今回はそんな山路桃香さんに塾生とスタッフの両視点からみた西千葉子ども起業塾の魅力やこれからについて話を聞きました。
※このインタビューは2020年に行われました。

執筆者:羽田尚
聞き手:飯塚準

塾生、山路桃香の姿──

まず、塾生の頃についてお聞きしたいのですが、起業塾は何年生の時に参加されましたか?

飯塚

小学校5,6年生の時に参加しました。小学校5年生の時は経理、6年生の時は社長を担当しました。

山路

なるほど。経理って、お金に関する仕事じゃないですか、抵抗はなかったのですか?

飯塚

そうですね……当時私は経理のことを何も知らなかったんです。でも“知らないから無理かも”というよりは、“知らないからこそやりたい!”という前向きな気持ちでした。

山路

なるほど。では、社長の仕事はどうでしたか? 楽しかったこと、辛かったことがあればお聞きかせください。

飯塚

社長として、ではないかもしれませんが、楽しかったことは2つあります。1つ目は、塾生2年目だったので、去年と違ったことをしたいと積極的にアイディアを出せたことです。2つ目は、同じ会社の経理の子も2年目で、1年目の時によく喋って楽しかったんです。実は、見学で参加した2019年の起業塾の最終日にその子が来ていて、久しぶに再会したんです……!

山路

へぇ~!

飯塚

再会してすぐお互いがわかるくらい、当時その子と距離を縮められたんだなぁって。そのくらい楽しかったです。

山路

そうだったんですね。逆に辛かったことはありますか?

飯塚

そうですね、当時の起業塾のミッションが、「第三土曜市(※)にサービスを提供し、イベントを盛り上げ、西千葉周辺を豊かにすること」だったんです。8月開催だったので、とにかく涼しいものをと思って、足湯の水バージョンを提供することにしたんです!

山路

※第三土曜市とは、毎月第三土曜日にJR西千葉駅北口を出てすぐのふくろう広場で開催されるイベント。初開催から今年で11年目になる。同イベントは地域の店舗、事業所、農家、高校生や大学生が出店しており、地域の交流に場ともいえる。
開催日時:毎月第三土曜日(1,2,8,12月は開催無し)11:30~14:30
開催場所:ふくろう広場(JR西千葉駅北口を出てすぐ)

すごい! 新しいですね

飯塚

足湯の水バージョンに決まった後、利用者数によって報酬が決まるという契約を吉川亮さん(プロシードジャパン代表取締役、Seedlings of Chiba事務局長)としたんですけど、暑くないとダメなんですよ。

山路

夏は涼しい日もありますもんね。

飯塚

そうなんですよ。それで最悪なことに当日に雨が降って……雨が降ると足を冷やす物はまったくダメですよね。客足も少なくて、赤字になりました。結局4社中3社赤字になったんです。

山路

ほとんど赤字になっちゃったんですね……。

飯塚

そうなんです。それで決算報告の時に、「雨じゃなかったら黒字にできました」って言ったら、後でアドバイザーとして来ていた起業家の方に、「万が一の時を考えて行動するのも一つのスキルだから、そういう力も欲しいよね」と言われて、胸が苦しくなりました。

山路

大人にいきなり厳しいことを言われたんですね……。

飯塚

あの言葉はかなり印象に残ってます……。

山路

スタッフ、山路桃香の姿──

2020年度西千葉子ども起業塾オンライン「シックス太陽コーポレーション」の会議の様子 (山路さんは会社付きとして参加)

次に、スタッフを務めている現在についてお聞きしたいのですが、まず、スタッフになった経緯を教えてください。

飯塚

過去に自分が起業塾に塾生として参加していて、子どもたちが実際の活動してる様子や起業塾を通して成長していく様子をスタッフになって見てみたいなという気持ちがあったからです。
あと、私が塾生の時も千葉大学生がスタッフをしていました。その時、千葉大学生のスタッフがすごく親切にしてくれました。私も千葉大学生になったし、せっかくだからやりたいなと思いスタッフになりました。

山路

そうなんですね。2020年はスタッフとして「会社付き」を担当されたと思うのですが、会社付きとはどんな役職なんですか?

飯塚

会社付きは子どもが楽しく活動できるようにサポートする係です。
子どもがZoomを扱う上で何か困っていたら教えたり、子どもが慣れていない間はタイムスケジュールをお知らせしたりと、事務的な仕事もしていました。
大切なのは、子どもが社内活動を進めていく際に、内容的なアドバイスや進行的なアドバイスはしないということです。

山路

なるほど。でも子どもたちだけとなると、話し合いが進まなくなることもあるじゃないですか、その時はどのように対処していましたか?

飯塚

そうなんですよね……実は最初の方は結構口出ししてしまっていて、社長さんに「どうするの?」と声をかけたり、画面オフになっている子に「できたらつけようか」と言っていました。でも途中から、「子どもたちだけで進めていくところを見守らないと!」と思い、言わないようにしたんです。そうしたら、社長さんが社長面談(※)で刺激を受けたのか、自分で話し合いを進めようと頑張ってくれました……!子どもの成長に驚きました。

山路

※各会社の社長に対し、会社の現状を踏まえ、実際に社長をされている方を含めた社会人がアドバイスをする場。

そうなんですね。子どもがどこまで頑張ってくれるかが分からないので、どこまで助言をして良いのか難しいですよね……。

飯塚

会社付きは本当に難しい役回りでした……。

山路

今までと“これから”の起業塾

塾生時代を振りかえってみて、山路さんにとって起業塾はどんな場でしたか?

飯塚

学校ではなかなか経験することができない経験ができました。普段関われない大人と関わる機会があり、誰かのニーズを考え、応えていくことを経験できた貴重な場でした。
また当時の起業塾を通して、地域のお店に興味を持つようになりました。こんな風に、人と地域を結んでくれる場でもあったのかなと思います。

山路

なるほど。ではスタッフを務めた2020年を振り返って、山路さんにとって起業塾はどんな場でしたか?

飯塚

子どもの成長を信じる場でした。

山路

信じる! なるほど。

飯塚

余計なことは言わずにひたすら見守ろう、子どもを信じようとしていたら、子どもたちが変わっていく姿が見えました。また、3日間という短い期間で子どもたちが大きく成長してくれたので、子どもの成長する力はすごいなと感じました。

山路

最後にお聞きしたいのですが、塾生とスタッフの2つの経験を踏まえて、これからの起業塾をどんな場にしたいと思っていますか?

飯塚

起業塾は子どもたちが普段ふれあえない大人とふれあえる場であってほしいし、子供が大人扱いされる場であってほしいと思っています。また、いくつかの企業が持っているであろうニーズを子どもたち引き出す場面があるといいなと思っていて、そのために会員企業が増えてくれればと思っています。

山路

より幅広い業種から企業が参加してくれたら、子どもたちもきっと楽しいですよね。

飯塚

はい。あと何より、子どもたちに楽しんでもらえる場であってほしいと思います。楽しんでやっている時は、自分が成長していることに気づかなくていいと思っています。でも、何年か後に、「もしかしたら起業塾で学んだことが生かされているのかもなぁ」ってぼんやりでもいいので思ってもらえるような場であってほしいです!

山路

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