「たくさんの子どもたちに西千葉子ども起業塾を経験してもらいたい」 
塾生、スタッフどちらも経験した山路桃香が語る西千葉子ども起業塾とは


2021年度西千葉子ども起業塾の塾長を務めたのは、小学生の時に塾生を経験したことのある、千葉大学教育学部3年の山路桃香さんだ。

山路さんは、小学生の時に塾生を経験したことに加えて、同じく3年生のスタッフの中で唯一、昨年度の西千葉子ども起業塾のスタッフもしていた。そんな経験豊富な山路さんでも、塾長という大役に悩まされたこともあるという。今回は、苦労もあった塾長という経験を含め、今年度の西千葉子ども起業塾の内容や今後期待することについて話を聞いた。

執筆者:横山紗衣莉
聞き手:市川真衣

一昨年度ぶりに対面で行われた西千葉子ども起業塾、そして初の試みも!

まず、2021年度の西千葉子ども起業塾の活動について教えてください。

市川

今年度の西千葉子ども起業塾では、入門コースと発展コースの2つのプログラムを行いました。入門コースは今年度から新たに挑戦したので、発展コースは従来行われてきた西千葉子ども起業塾のことです。入門コースはオンラインで6月から7月にかけて計3回開催、発展コースは対面で8月3日、4日、5日の計3日間連続で開催されました。

山路

これまでにない形で今年度の西千葉子ども起業塾は開催されたのですね。入門コースに関しては初の試みということでしたが、入門コースを取り入れることになった理由を教えてください。

市川
2021年度西千葉子ども起業塾入門コース「営業セクション」の様子

学びのインプットを増やしたかったからです。これは昨年度までの反省が反映されています。昨年度の西千葉子ども起業塾では、今年度と同様に3日間連続で行われましたが、その3日間は全て会社での活動にあてられたので、営業をする際のヒアリング方法、企画を立てる方法、企画を提案するためのプレゼン方法について深く学ぶことなく実践となってしまいました。子どもたちは素晴らしい企画を提案するのですが、そのプレゼンの仕方があまり効果的なものではなくJFEスチールさんに響かず終わってしまった会社も少なくありませんでした。当時スタッフであった私も含めて悔しい思いをしました。そこで、今回はインプットを入れる機会を設置したいという思いから、実践的な発展コースの前に入門コースを開催しました。

山路

入門コースではどのようなことが学べるのでしょうか。

市川

入門コースでは、「営業セクション」「企画セクション」「経理セクション」に分かれており、それぞれで学ぶことができます。営業セクションでは、先ほどお話した、企画をいかに効果的にプレゼンするかの極意について学びます。企画セクションでは、その企画自体を作成する上で、いかに取引先の人の意に沿ったものにできるかについて学びます。経理セクションでは、昨年度の西千葉子ども起業塾で使用した会計ゲーム*をさらにバージョンアップした形で社会のお金の流れの仕組みや税金について学びながら帳簿の付け方について学びます。

山路

*詳しくは2021年4月1日掲載の「経済教育を楽しく学んでほしい」この想いを実現すべく試行錯誤を繰り返し完成させた会計ゲームの制作者、藤井あずみの2ヶ月間に迫るをご覧ください。

2021年度西千葉子ども起業塾入門コース「経理セクション」の様子

入門コースでは、発展コースでの社長や経理、社員の仕事でも活きる内容が学べるので、子どもたちにとっては貴重な機会ですね。

市川

そうですね。オンラインでの開催ではありましたが、子どもたちからも好評で、とても手応えを感じることができました。

山路

初めてのリーダー“塾長”は苦悩の連続…

では次に、入門コースと発展コースの準備期間での山路さんの仕事内容について教えてください。

市川

入門コースに関しては、企画開発プロジェクトチームのリーダーである小林廉くんの補佐及び、営業セクションの活動内容を企画しました。発展コースでは塾長を務め、活動全体の責任者となり、企画をまとめました。

山路

たくさんのことをされていたのですね。では、入門コースと発展コースの企画段階において、悩んだことや苦労したことについて教えてください。

市川

2つほどありますね。1つ目は、入門コース発展コース限らず、企画を練っていく上で私と企画プロジェクトチームの他のメンバーのモチベーションが同じか確信が持てず、不安になりました。企画開発プロジェクトチームは11人いるのですが、唯一私だけが小学生の時に塾生、昨年度ではスタッフを経験していたので、西千葉子ども起業塾に対する事前知識がありました。当初は、不安を抱えつつも、その事前知識を生かして、「去年はこうだったよ」「子どもの立場から見たら、こうした方がいいかも」などと伝え続けていく中で、他のメンバーもたくさん意見を出してくれるようになり、安心して協力して企画を練ることができました。

山路
2020年度西千葉子ども起業塾でスタッフをしている山路桃香

不安に感じるよりも、自分の経験や知識をメンバーに伝えることを優先することができた結果ですね。

市川

2つ目は、リーダーシップをとることがとても難しかったことです。最初の頃は、リーダーという意味を履き違えて、一人で走って、一人で抱えて、一人で苦しんでを繰り返していました。そんな時に、協力してくださっている社会人の方から、「リーダーなんだから、これは誰かに任せるとか、大人に頼るとか、人を動かす力が大事なんじゃない? マネジメント力が足りないよ」と言われました。

山路

リーダーといえばなんでも自分でやるものだと勘違いしてしまいますよね。

市川

そうなんです。私もそうでした。また、企画開発プロジェクトチームのリーダーの小林廉君に「あのね、モスちゃん*、モスちゃんが頭の中で考えていることね、全部ちゃんと言って欲しい」と言われて、そこで私はなんで今まで誰にも自分の頭の中で考えていることを言ってこなかったのだろうと思い、とてもハッとさせられました。それからは、仲間に相談すること、周りに仕事を振ることを意識しました。私に教えてくれた社会人の方と小林君、いつも私を支えてくれた秘書役の安部唯花さんには感謝しています。

山路

*山路桃香さんのニックネーム

リーダーの役割は一人で全てをするのではなく、周りを巻き込んで組織としてどう動かしていくかが大事なのですね。

市川

そうなんです。当時の私はあれもやらなければ、これもやらなければと一人で抱えてしまいましたが、周りに話した後はとても楽しく準備することができるようになったと思います。

山路

塾長という大役を終えて

これまでは、入門コースと発展コースの準備について伺ってきましたが、次は本番についてお伺いします。今年度の西千葉子ども起業塾での仕事について教えてください。

市川

入門コースでは、担当であった「営業セクション」では運営を、その他のセクションでは、会社付きといって子どもたちの補佐を主に担当しました。発展コースでは、塾長として1日の始まりの会での挨拶や子どもたち同士のトラブルの対処、社長面談*を担当していました。これらの仕事は不定期で発生するものなので、基本的には子どもたちの様子を見に行ったり、本部で今後のスケジュールの確認や予想外の出来事の対処などをしていました。

山路

*会社が行き詰まった時に、子どもの社長が藤川先生や実社会で社長をされている方々、塾長と相談することができる場。

2021年度西千葉子ども起業塾発展コースの閉塾式において塾長からの挨拶をしている様子

なるほど。では、それらの塾長の仕事を通して、学んだことを教えてください。

市川

2つあります。1つ目は、先ほども申し上げた「人を動かす」ことです。リーダーシップという本当の意味を知ることができました。2つ目は、広い視野を持ち、常に目的を忘れないことの大切さです。企画をしているメンバーが教育学部生ということもあり、企画内容が学校のカリキュラムのようになってしまい、煮詰まることが多く途中で、本来の目的を忘れてしまっていることもありました。しかし、テストプレイを重ねるなかで、社会人の方々が、「本来の目的は、起業する、チャレンジする楽しさを感じてもらうことだよね?」と逸れてしまった道を正してくださいました。

山路
2021年度西千葉子ども起業塾発展コースにおいて、融資の承諾書に押印している様子

どんなに良い企画ができても、本来の目的を見失っては本末転倒ですね。

市川

そうなんです。途中で気づかせてくれた社会人の皆様には本当に感謝しましたし、これが社会人なのかと圧倒された時でもありましたね。

山路

塾長を終え、次年度以降の西千葉子ども起業塾、スタッフに期待すること

今年度の西千葉子ども起業塾は成功しましたが、来年度以降に向けて、さらに改善していきたいことはありますか?

市川

なるべく多くの子どもたちが西千葉子ども起業塾のような活動をできるようにしたいです。というのも、今回入門コースの参加者が28人、発展コースの参加者が37人、もちろんどちらのコースにも参加してくれた子どももいるのですが、のべそのまま合わせても65人なんです。

山路
2021年度西千葉子ども起業塾発展コースにおいて、子どもたちが話し合いをしている様子

西千葉子ども起業塾対象年齢の千葉市の子どもたちの数、約4万2千人を考えるとやはり少ないですね。

市川

そうなんです。これは、藤川先生もよくおっしゃっています。もっと多くの子どもたちが参加できるように、プログラムを改善していいきたいです。また、入門コースも年に1回ではなく何回もできるようなものにしたいです。

山路

そうですね。限られた子どもではなく、より多くの子どもたちに起業塾に参加してもらうことで将来の千葉市がより輝くことは間違いなしですね。それでは、最後に、今後の企画開発プロジェクトチームの中心メンバーにもなっていく後輩に向けてメッセージをお願いします。

市川

企画を練るときは、自分たちも楽しみましょう。子どもたちのためにプログラムを作成している中で、社会人の方々からたくさんの知識をいただきます。これらは最終的に自分たちのところに返ってきて、作っている自分たちにもその知識が生かされます。子どもたちのためのプログラムだけど、「こうしたらおもしろいんじゃないかな、夢中になるんじゃないかな」と試行錯誤しながら作っていくごとに、日々手応えを感じていきます。だから、プログラムを作るときはぜひ自分たちも楽しんでください。

山路
記事一覧