「経済教育を楽しく学んでほしい」
この想いを実現すべく試行錯誤を繰り返し完成させた会計ゲームの制作者、
藤井あずみの2ヶ月間に迫る


西千葉子ども起業塾は、2020年で10年目の節目を迎えました。そこで、より深い学びをしてもらうために新たに経営コースと会計コースを設置することとなりました。2020年の西千葉子ども起業塾で、経理担当の塾生が所属する会計コースで使用する会計ゲームを作成した藤井あずみさんに、ゲームができるまでの葛藤や苦労などについて話を聞きました。
※このインタビューは2020年に行われました。

執筆者:川畑守護
聞き手:田口瑠菜

なぜ会計ゲームを作ろうと考えたのか

まず、会計ゲームを作ることになった理由を教えてください。

田口

経理担当となった塾生たちに、お金の流れや資金のことについて理解して欲しいと思ったからです。これまでの西千葉子ども起業塾では経理担当の塾生がお金の流れや資金のことをよくわからないまま帳簿記入をしていました。そこで、今回は、会計コースという新たな仕組みを作り、楽しく経理について学んで欲しいと思ったんです。

藤井

ゲーミフィケーションの考えを取り入れたんですよね。ゲーミフィケーションとはどんなものなのでしょうか?

田口

ゲームではないものにゲームの要素を取り入れることです。目標、ルール、フィードバックの3つの要素を入れ、会計をゲーム化しました。

藤井

なるほど。ゲーミフィケーションを取り入れた理由はなんでしょうか。

田口

楽しく学ぶにはゲームの要素を取り入れていくことが重要だと思ったからです。経済教育に興味のある子が少ないのではないかと感じていました。そこで、ゲームなら興味をもってもらえるんじゃないかと思ったんです。

藤井

子どもがわかりやすく、取り組みやすいものを作ったということですね。子どもたちは実際楽しそうにしていましたか?

田口

子どもたちはとても楽しそうにしていて、盛り上がっていました。イベントが起こったり、相手と取引を行ったり、帳簿を記入したりなど、実際に手を動かすことや頭を働かせることがとても多いゲームにしたからこその反応だったと思います。また、ゲームの後には「お家に欲しい!」と言ってくれた子どももいたんですよ。

藤井

そんなに喜んでもらえると作成した側もとても嬉しいですね。

田口
帳簿シート(一部抜粋)

会計ゲームができるまで

会計ゲーム内で出てくるお仕事依頼書の一例(1)

制作にあたって、ゲームを構想することこと、Googleスプレッドシートを用意するなどの準備の時間があったと思うのですが、どのくらいかかったのでしょうか。

田口

2ヶ月間はかかりましたね。テストをするたびに改良していきました。

藤井

それは、ゲームの形式を考えるのに時間がかかったのですか? それとも、経済教育を楽しく学べるという機能をもたせるのに時間がかかったのですか?

田口

どちらもですね。楽しく学ぶという軸のもとで、ゲームを作ることは初期の段階で決まっていたことでした。しかし、今の形を作り出したのは西千葉子ども起業塾開催の1ヶ月半前くらいでした。会計ゲームではトランプを使用するのですが、当初は、人生ゲームやオセロのようなものなどいろいろな形式を模索したので、形が決まるまでとても時間がかかりました。

藤井

会計ゲームを作るにあたってモデルにしたゲームなどはありますか?

田口

完全にオリジナルです。企画開発プロジェクトチームで考え、何度もテストを繰り返し、完成しました。

藤井

私自身会計ゲームのようなゲームはしたことなく、クオリティも高かったので何かモデルがあるのかと思っていました。

制作していくなかで印象的な出来事、大変だったことはありますか?

田口

形がないものを作らなければならなかったため、何回もテストプレイをした際、その度に問題が出てきたことです。「お仕事依頼書」の内容も一つ一つ藤川先生に見てもらい、指導していただきました。対面ではなくオンラインで、どうすれば子どもたちをゲームの世界に引き込めるかが一番の課題でした。

藤井

オンライン下での会計ゲーム

オンラインに戸惑う子どもたちはいましたか?

田口

いませんでした。子どもたちがとても優秀で飲み込みが早かったため、ゲームの世界に入り込んで、家の中でも楽しんでいたので大成功だったと思います。子どもが飽きないようにすることが最大の課題だったためこの点に関してはクリアできたはずです。

藤井

子どもたちは、経済教育を学ぶことができましたか?

田口

大学生たちがサポートしなくても、帳簿シートの操作ができていました。消費税などの税金や収入支出についての項目を自分たちで入力していました。また、お金の流れについてわかったうえで遊ぶこともできていました。そのような姿を見て、ゲームによって経済教育を学ぶことのハードルが下がったからこそ、確かな知識が自然と記憶に残りやすくなったのではないかと思いました。

藤井

オンラインならではの会計ゲーム

2020年の西千葉子ども起業塾では、新型コロナウイルス感染症の影響によりオンラインでの開催となりましたが、オンラインならではの良い部分はあったのでしょうか。

田口

会計ゲームに関してはオンラインだからこその良いところが目立ちましたね。
Googleスプレッドシート(※)で作成した帳簿シートは、パソコンならではのもので、対面で手書きで帳簿を付けるよりも子どもたちもやりやすそうでした。

藤井

※Googleが提供するWEBブラウザ上で動作する表計算ソフト。Excelに似ている。

それはGoogleスプレッドシートが複数の人で同時に編集できるからですか?

田口

そうです。運営側も会社の情報が掴みやすくなるので、電子化したことはとても良かったと思います。

藤井

会計ゲームのこれから

会計ゲーム内で出てくるお仕事依頼書の一例(2)

藤井さんが今回会計ゲームを通じて学んだことを今後どのように活かしていこうと考えていますか?

田口

キャリア教育や経済教育については、子どもたちがこれから生きていくうえで必要になっていきます。子どもたちにそれらを学ぶ機会を与えることが重要だと感じました。将来、学校現場で活躍したいと考えているため、このような視点を入れた授業をつくりたいと思います。

藤井

藤井さんは将来教員を目指しているため、自分の学んだことを教壇に立った時に生かそうと考えているんですね。

田口

そうです。

藤井

もし自由に授業ができる時間があれば会計ゲームを利用しますか?

田口

そうですね。社会科などで班に分かれて行うことができればいいなと思います。

藤井

確かに消費税は普段払っているので身近ですが、法人税などは大学生でもわからない人が多いですよね。もしそれらを会計ゲームで小学生の頃から学んでおくことができれば社会の見え方が変わってくるかもしれないですね。

田口

会計ゲームにも法人税だけではなく所得税なども入れることができれば、もっとリアリティのあるゲームを作ることができるのではないかとも考えています。そして、それが教育現場にも広がっていけばいいなと思います。

藤井
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